獣医師の山本です。
6/12に年1回実施している富士分院勉強会を開催しました。
富士分院には獣医師2名と家畜人工授精師(受精卵移植師)1名、削蹄師1名が在籍しており、富士山麓の朝霧高原とその周辺での診療と繁殖業務、蹄病処置に従事しています。普段は本院とは関連なく活動していて、半田の本院とは全く異なる環境下で独自の診療体制で運営されている分院です。
個体診療が多く、症例が多い分だけ日々進化している半田本院の診療技術を分院とも共有するために私が出張勉強会をしています。毎回本院からも1名同行参加しています。
10年近く前から始めて、途中から近隣の開業獣医師やNOSAI静岡の獣医師のみなさんも参加されて10人近い人数で楽しく実践的な勉強会になっています。コロナ禍で2年中断しましたが、2022年から密にならないように富士開拓農協の会議室をお借りして再開して継続しています。
NOSAI静岡は昨年診療業務を廃止してしまいましたが、勉強会に参加していた東部の獣医師の皆さんは開業されたり勤務されたりして現場に残られたので今年も皆さんそろって参加していただきました。
今年の題材は、断趾術の復習、第一胃洗浄について、子牛の持続点滴療法について、の3点でした。
断趾術は何年も前に勉強会をしてその直後に富士分院とNOSAI静岡合同で制御できない蹄深部感染症の蹄の断趾を実践したというものですが、そのときいなかった若手獣医師の方から質問があったので、資料をみながらその質問に答えたりディスカッションしました。
第一胃洗浄は半田本院ではときどき実施しますが、富士分院ではたまにしか実施しておらず、他の皆さんは未経験だったため、道具も持参してyoutubeに投稿されている動画も視聴しながら説明し、独特の臭いの灰色粘土状の便についてはその臭いが古くからある衣類の防虫剤「ナフタリン」の臭いに似ているため、それを持参して臭いも覚えてもらいました。ナフタリンは40歳以上の年代の方は知っていましたが、若い方は知りませんでした。世代間格差です。
子牛の持続点滴については、子牛の感染性下痢が長期化した場合に行う点滴手技で、子牛の寝起きを制限せずに半日から数日間点滴を持続させることで持続的な脱水や低血糖、持続的重度なアシドーシスに対して25%ブドウ糖や7%重曹注などの高張液も安全に持続的に投与できる方法です。
富士山周辺では感染性下痢の長期化症例はほとんどないとのことだったので、どの地域でも必ずある「低体温低血糖で娩出された低酸素症の新生子牛」を題材にしました。点滴を用いている獣医師と用いていない獣医師がいて、持続点滴を使った方が救命率は上がるはずということで持続点滴の設置方法や輸液メニューの組み方のコツなどを解説しました。
それぞれ経験のある症例についてディスカッションしたり、質問や意見が出て、少人数ならではの活発な情報交換の場になっています。
半田本院からは主に若手獣医師を連れていきますが、勉強以外にも良い息抜きやちょっとした交流になっていいと思います。
今後も続けていきたいです。