当院の削蹄は牛を枠場に入れて挙肢保定し、電動グラインダーと削蹄用ナイフを使用します。グラインダーには削蹄用の刃が3枚または4枚付いた削蹄用ディスクを装着してあり、回転するディスクを蹄に当てることによって伸びた蹄を高速で削切することができます。ただし適当に削るとガタガタになったり斜めに削れたりするので練習が必要です。
理論的に正しいとされている削蹄法の手順を座学で覚え、敷地内の削蹄倉庫で実際に先輩から教えてもらいながら順を追って練習し、教えてもらったところまではひたすら自主練を繰り返し、先輩のチェックを受けて先に進む、これを時間を作って繰り返していき、通常の機能的削蹄ができるようになったら治療的削蹄の基本を教えてもらい、現場で蹄病の牛を実際に機能的削蹄をしてから治療的削蹄によって蹄病が回復しやすいように処置をする、という流れで技術を習得していきます。
機能的削蹄は家畜としての牛が蹄の機能を正常に使える、つまり立って歩いてエサを食べて搾乳に行く(パーラー搾乳の場合)、という日常生活が正常にでき、またその期間ができるだけ長く維持されるように削蹄することです。
治療的削蹄は蹄病になった牛を蹄病が回復しやすいように処置をするのですが、どの個体でもまず基本になる機能的削蹄をやってから悪い局所にアプローチするようにしないといけません。昨日的削蹄ができていないと蹄病が治らなかったり、治癒後に再発しやすい蹄の形になってしまったり変な蹄の伸び方になってしまったりします。それでは意味がないので獣医師であっても正確な機能的削蹄の習得が必須です。機能的削蹄がきちんとできれば最初は目視できなかった蹄病でも自然に発見できることが多いです。たとえ最初から見えていてもそれに飛びつかずに機能的削蹄を行なってから手順に沿ってアプローチします。
牛は1本の肢に蹄が2つあるので片方の蹄が重度の蹄病で痛い場合はもう一方の蹄に木製やプラスチック製のブロック(ゲタ)を強力な接着剤で装着することで蹄病部分に負荷がかからないようにすることができます。ブロックをつけなくても蹄角質の削切だけで回復していくかどうかの判断には知識と経験が必要です。皮膚炎や趾間フレグモーネ(2本の指の間に感染が生じて奥深くに感染が入り込んで腫れる)など蹄角質の病気ではない蹄病もあります。
削蹄や蹄病処置は工夫しないと4K(危険、きつい、汚い、くさい)ですが、それを低減するような道具と工夫と連携、予定管理、そして安全管理とその共有によって定期削蹄が成り立っており、そうしないと臨床現場の蹄病処置も「蹄病の治療依頼があってから3日以内に処置をする」という基本理念を続けることも不可能だと思います。
練習を始めた獣医師はたくさん練習しているので現場デビューもそう遠くないと思います。がんばってほしいです。